税理士法改正・税制改正の流れ
注1 建議書・・・建議とは「意見を申し立てる事。その意見」であり、日税政が各税理士会から提出された意見書などを基に審議し、税制改正に関する建議書をとりまとめています。同時に日税政からも、調査研究部などの検討に加わっており、日税連と日税政において建議書作成の為の調整が行われています。
注2 建議権・・・税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、またその諮問に答申することができます。
注3 要望書・・・日税政は、日税連が作成する建議書を基に税制改正要望書を作成しており、地区連・県連にて、それをもとに、重要な項目等を定めるなどをし、国会議員等へ陳情を行ってます。
注4 後援会・・・「税理士による国会議員等後援会」は、税政連活動の大きな柱として昭和50年7月に第1号が誕生し、以来、数多くの後援会が結成されてます。税理士制度と税政連・税理士会の要望に理解を示していただく議員の後援会設立を推進しています
令和5年度の日税連の建議内容及び日税政の要望内容
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【税制改正に関する要望】について
東京地方税理士政治連盟(神奈川県連・山梨県連)では、「令和5年度税制改正に関する要望の内特に重要な4項目」を「令和5年度の日税連の建議内容及び日税政の要望内容」を踏まえ、下記のとおり決定いたしました。
【消費税】適格請求書等保存方式導入の延期
適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)については、下記の問題点に対して必要な措置を検討すべきである。また、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の制約が概ね解消され、中小企業者の実務を踏まえた負担軽減措置が講じられるまでの間は、導入を延期すべきである。
インボイス方式においては、取引の都度、インボイスの有無の確認を行う必要がある等、事業者及び税務官公署の事務に過度な負担を生じさせることから、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないように見直すべきである。
また、免税事業者はインボイスを発行できないため、対事業者取引から排除されることや消費税等相当額の値下げを強いられ、廃業を余儀なくされる事業者が増える可能性があることにも留意すべきである。
【消費税】非課税取引の範囲の見直し
非課税取引については、売上げに対して取引先から消費税相当額を収受できない一方で、商品調達や設備投資等の仕入税額控除は認められない。特に、社会保険診療等については、仕入れに係る消費税相当額を診療報酬に上乗せするなどの調整ができない。このため、非課税取引を主とする事業者は、仕入れに係る消費税について実質的に負担する仕組みとなっており、経営を圧迫する要因となり得る。
非課税取引には、「税の性格から課税対象とすることになじまないもの」と「社会政策的な配慮に基づくもの」があるが、社会政策的な配慮に基づくものについては、課税取引とし、計算をできるだけ平易にすべきである。
【所得税】人的控除の引上げと基礎控除へのシフト
1. 人的控除の引上げ
基礎的な人的控除(基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除及び扶養控除)は、最低限度の生活を保障するための基礎的な人的控除と解され、課税最低限を示すものとして維持すべきである。また、課税最低限は、生活保護水準等を参考に決定していくことが望ましく、現行の基礎的な人的控除はその額を引き上げるべきである。
2. 基礎控除へのシフト
給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、全ての者に適用されるべき基礎控除に負担調整の比重を移すことが望ましい。
【所得税・相続税】災害損失控除の創設
現行の雑損控除制度では、災害による損失と盗難又は横領による損失を同じ取扱いとしている。しかし、災害による資産に関する損失は、盗難又は横領による損失よりも多額になることが多い。救済策として、雑損控除から自然災害による損失を独立させて災害損失控除を創設すべきである。
災害による損失は生活基盤である資産に生じた偶発的な損失であり、収入を得るための必要経費的なものではない。このため、課税所得の計算上における所得控除等の順序については、災害による担税力の喪失を最大限に勘案する観点から、災害損失控除以外の他の所得控除を適用し、最後に災害損失控除を適用することとすべきである。
純損失について、青色申告の場合は3年間の繰越控除が認められる一方で、白色申告の場合は、被災事業用資産の損失の金額に限って認められているだけであるため、災害に起因して純損失が生じた場合には、白色申告についても繰越控除を認めるべきである。
繰越控除期間について、東日本大震災時に認められた5年間繰越控除や更正機関との平仄を考えれば、最低でも5年間の繰越が認められるべきであり、法人税における繰越控除期間が10年間であることを踏まえれば、控除期間のさらなる延長も検討すべきである。
また、相続時精算課税制度により受贈した資産について相続税の課税価格に加算する価額は、贈与時の価額であるが、災害により相続時の価額が贈与時の価額を著しく下回り、回復の見込みがない場合には、相続時の価額で加算する救済措置を設けるべきである。
過去の税制改正達成実現項目
年度 | 主な実現項目 | |
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令和4年度 | 令和4年度税制改正に関する要望 | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長 交際費等の損金不算入制度の見直し 財産債務調書の提出期限等の見直し など |
令和3年度 | 令和3年度税制改正に関する要望 | 中小企業者等に係る法人税の軽減税率等の各種特例の適用維持 個人住民税における上場株式等の配当所得等に係る申告手続の簡素化 電子帳簿等保存制度の普及 など |
令和2年度 | 令和2年度税制改正に関する要望 | 寡婦(寡夫)控除の適用要件の見直し 連結納税制度におけるグループ通算制度の創設 申告書等閲覧サービスにおける閲覧時の写真撮影の可能 など |
平成31年度 | 平成31年度税制改正に関する要望 | 事業承継税制における資産保有型会社の判定時期の見直し 仮想通貨取引における円滑・適正な納税のための環境整備 eLTAX障害発生時の申告等に係る期限延長 など |
平成30年度 | 平成30年度税制改正に関する要望 | 事業承継税制における適用要件の大幅緩和 所得拡大促進税制の基準年度方式の廃止 特別徴収税額通知(特別徴収義務者用)へのマイナンバー記載の見直し など |
平成29年度 | 平成29年度税制改正に関する要望 | 災害関連税制の常設化 取引相場のない株式の評価における類似業種比準方式の見直し 設備投資促進税制及び研究開発税制の延長・拡充 など |